大高緑地「恐竜パーク」計画を考える

名古屋市緑区にある県営大高緑地公園内の樹林地に「恐竜パーク」を誘致する愛知県の計画について考えます。

5. 住民不在の事業立案・検討

大高緑地は県民の共有財産

 都市公園である大高緑地は県民の共有財産といえます。公園を管理する行政には住民のニーズや公園の公益性を踏まえた運営が求められます。そのためには住民の意見を十分に聞き、それを的確に反映させることが重要と考えられます。

「園内の話」住民の意見を聞かず

 しかし、今回の事業をめぐっては、県は施設を設置運営する事業者と協定を交わし終える2015年10月まで、住民に事業案を説明したり、住民の意見を聞いたりする機会を全く設けてきませんでした。これについて、県の担当者は中日新聞の取材に「園内の話なので、住民から意見を聞くことは考えていなかった」と答えています(2015年11月8日付中日新聞朝刊)。

 恐竜パーク事業は住民にとっては寝耳に水で、さまざまな意見や懸念が出されています。しかし、県は10月の発表以降、地元の区政協力委員を個別にまわって説明をしているものの、住民や公園利用者に十分な説明を行った上で広く意見を聞き、それを反映させるという姿勢は十分とはいえません。

事業の見直し求め1万5千の署名

 そうした中、住民の声を県に届けようと「大高緑地を愛する会」によって事業の見直しを求める署名活動が取り組まれ、2016年1月14日までに1万5千筆を超える署名が県に提出されています。

 なお、同会のFacebookの記事によれば、2回目の署名提出のため、同会が県公園緑地課を訪れた際、2度にわたり署名の受け取りを拒んだとのことです。署名提出は憲法16条で請願権として認められており、請願法第5条は「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。」と定めています。署名の受け取り拒否があったとすれば、これに違反するものであり、「法律による行政」を行うべき県庁としてあってはならない行為です。

 この点について、筆者が公園緑地課に問い合わせたところ、「答えられない」の一点張りで、一方的に電話を切られました。

住民と公園・事業のあり方検討を

 本来であれば、公園全体はどうあるべきか、その中で事業予定地をいかに利活用していくかについて、住民や公園利用者らの意見を聞きながら決定していくというプロセスを経る必要があったと考えられます。

 県には本事業に関して住民への説明や意見を聞く姿勢が十分でなかったことを率直に認めた上で、住民と真摯に向き合い、住民とともに公園・事業のあり方を考えていくことが求められます。