大高緑地「恐竜パーク」計画を考える

名古屋市緑区にある県営大高緑地公園内の樹林地に「恐竜パーク」を誘致する愛知県の計画について考えます。

4. 恐竜パーク計画に対するさまざまな意見

 新聞やテレビでの報道や筆者による聞き取りによれば、恐竜パーク計画について周辺住民や公園利用者らからは以下のような意見があがっているようです。

○周辺住民

 恐竜パークの開業が予定されている樹林地は閑静な住宅街のそばにあり、樹林地に最も近い住宅との距離は100mほどしか離れていません。恐竜パークでは恐竜の鳴き声をスピーカーで流すことが計画されており、騒音に悩まされることになるのではないかとの懸念や来園者の増加による周辺道路の渋滞発生などの生活環境への悪影響が心配されています。

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○公園利用者

 地元の自主保育グループは、恐竜パークが開業予定の樹林地や樹林地に隣接する若草山の広場を子どもたちが自然と触れ合える学びの場として長年利用してきました。また、樹林地やその周辺を日常的に散策する人も多く、同自主保育グループや環境団体などからは大都市に残る貴重な自然を学びの場として残すべきとして事業の見直しを求める声があがっています。

 一方、テレビのインタビューでは、新たなテーマパークができることを好意的に受け止める人、期待を寄せる来園者も見受けられました。

公園の使い方で分かれる意見

 散策や保育などで日常的に利用する地元の人や自然観察などで自然を親しむ場として利用する人と、園内の施設や催しを楽しむために来園する人とでは、公園の利用の仕方が異なるため、計画に対する賛否が分かれることにつながっていると思われます。

大高緑地の価値・魅力は何か

 また、公園としての価値・魅力をどう考えるかー大都市に残る貴重な自然として守ることに価値を置くか、テーマパークとして魅力度を高めることに価値を置くかーによって、事業に対する評価も分かれることになると思います。

 この点に関して、事業の見直しを含め、住民と行政の対話を通じた公園づくりを求める「大高緑地を愛する会」は2016年1月、生物多様性保全に向けた取り組みを打ち出している県の方針も踏まえ、公園を緑地保全ゾーン、里山体験ゾーン、ネイチャープレイパークゾーンからなる「環境教育テーマパーク」とし、NPOと行政の協働によって運営していくことを県に提言しました。

*同提言は同会のブログ・Facebookのページに掲載されています。

(参考)大高緑地を愛する会
 ブログ http://ameblo.jp/aisurukai/
 Facebook https://www.facebook.com/%E5%A4%A7%E9%AB%98%E7%B7%91%E5%9C%B0%E3%82%92%E6%84%9B%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BC%9A-590940497719864/

住民に開かれたあり方議論が必要

 県に求められるのは一公園の経営という観点だけにとどまりません。上記のような提言なども踏まえながら、広域的な環境・公園行政を担う立場として、関係部署間の連携を図りつつ、さまざまな公益的な観点を踏まえて公園のあり方を検討していくことが求められます。

 その際、住民に開かれた形で公園のあり方を議論していくことが県民の共有財産として公園を活かしていく上で重要といえるのではないでしょうか。