大高緑地「恐竜パーク」計画を考える

名古屋市緑区にある県営大高緑地公園内の樹林地に「恐竜パーク」を誘致する愛知県の計画について考えます。

7. 恐竜パーク事業に関する情報公開にみる問題点

 2015年12月15日、筆者が請求した行政文書の一部を開示するということで、県庁の愛知県県民相談・情報センターへ閲覧に行ってきました。今回開示されたのは以下の文書です。

「同事業の契機および民間活力導入・同事業に関する検討経過・内容が把握できる文書」「大高緑地公園施設設置管理者選定委員会の配布資料および議事録・応募事業者の評価点」に該当する文書

【全部開示】

・愛知県第五次行政改革大綱
・愛知県第六次行政改革大綱
・平成25年度行政改革の推進に向けた外部有識者による公開ヒアリングの結果
・大高緑地公園施設設置管理者選定委員会の配布資料の一部(評価基準(案)・採点表以外)
・第1回選定委員会の議事録

【一部開示】

*非開示部分は黒塗り
・大高緑地公園施設設置管理者選定委員会の配布資料の一部(評価基準(案)・採点表)
事業者選定の採点集計表

 

 開示文書の閲覧は県民相談・情報センターの会議室にて県公園緑地課の職員2人が立ち会う形で行われました。以下では、文書開示の際の当方と県公園緑地課とのやりとりについて報告した上で、情報公開制度の趣旨に照らした問題点を指摘したいと思います。

 

請求に対して不十分な文書開示

 今回、開示された文書のうち、「同事業の契機および民間活力導入・同事業に関する検討経過・内容が把握できる文書」に該当する文書として開示されたのは、選定委員会の関係資料を除けば、県の行政改革大綱2部と行政改革の推進に向けた外部有識者による公開ヒアリングの結果1部という計3部の文書のみ。選定委員会の関係資料以外の文書はいずれも県のウェブサイトに掲載されているもので、公園のあり方を検討するという大きな方向性は書かれているものの、本事業に直接関わることは何も書かれていません。

 そのことを指摘した上で、「お示しいただいた文書がそれぞれ請求内容のどの部分に該当する文書と判断されたのかをご説明いただけますか」とお聞きしましたが、口をつぐんだまま、お答えいただけませんでした。

「出さない」という頑なな姿勢

 そこで、現在進行中の本事業に関する検討経過・内容を把握できる該当文書がこれしかないというのはどう考えても不自然であり、情報公開条例の趣旨に則って、手元にある該当資料を誠実に開示すべきだと強く求めましたが、職員の方は「今回の請求内容について担当者の方で判断して、請求に対する内容に該当するものがこれだということでこの文書をお示ししている」と繰り返して譲りませんでした。

 また、「これ以外の文書の開示が必要であれば、再度必要な内容を記載の上、請求してほしい」の一点張りだったため、再度請求するには該当文書を特定する必要があるので確認させてほしいと前置きした上で、「事業の検討を進める際、あるいは事業者と調整を進める際、文書は一切作成せず、すべて口頭で行ってきたのですか」と質問しましたが、口をつぐんだまま。

 「事業の検討を進める上で文書を作成しないはずはなく、進行中の事業に関する文書を廃棄することも考えられない。担当者の方が事業を成功させるために苦労して作成された文書だということであれば、胸を張って開示すべきだ」と強く迫りましたが、返ってきたのはまたしても「請求内容について担当が該当すると判断した文書としてはこれだ」という説明でした。

行政の側で開示文書を取捨選択

 情報公開制度は県政に関する情報を公開し、県民が県政をチェックできるようにするための制度のはずです。しかし、県側が手元にどのような文書があるかを明かさず、実際には県が保有している該当文書を「ない」ことにしてしまえば、県民としてはチェックのしようがありません。このような情報公開制度の運用がまかりとおるとすれば、大変由々しき問題です。

 なお、開示決定に対して不服がある場合、行政不服審査法に基づく異議申立てをすることが制度上可能です。異議申立てをした場合、県情報公開審査会で審議されることになりますが、そこで結論が出されるまでには少なくとも数カ月を要します。今回のように開示請求の内容を曲解し、該当するはずの文書を開示しないというようなことはあってはなりません。

 しかし、今回の開示請求に対する該当文書はこれだけだと一歩も引かないため、やむを得ず、今回の開示決定に対する課の見解として一旦受け止めるとした上で、改めて開示請求しなおすとしても、当方として開示を求める内容について、どのような文書が存在するのか、当方と公園緑地課の間ですり合わせをした上でなければ、今回の二の舞になることは明らかだと伝え、後日改めて当方と公園緑地課の間ですり合わせを行うことになりました。

黒塗りによる過剰な非開示

 事業者の選定に係る評価基準と評価結果に関する文書は一部非開示(黒塗り)の条件で開示されました。県側は「今後の事業者選定の際、“今回の評価細目に挙げられたポイントだけを押さえて提案すればいい”という形で情報が使われてしまうと困る」「個々の委員が特定される形での採点結果・コメントの公表はできない」ことを開示しない理由に挙げました。

 ただ、実際に開示された文書を見てみると、上記の理由に該当しない箇所(大括りの評価項目ごとの採点結果および委員名を伏せた状態での各委員の項目ごとの採点結果)についても黒塗りされていました。そのことを指摘した上で、黒塗り部分の見直しを求めたところ、「隠すつもりはない」ということで職員の方も理解を示されました。

 この時点では、当方の指摘を踏まえて黒塗り箇所を再検討していただくことになったのですが、後日、「黒塗り部分の変更はしない」との連絡がありました。情報公開条例が挙げる開示しない理由に具体的に該当しない限りは開示しなければならないはずであり、不当な決定といえます。

情報公開制度の運用改善の必要性

 愛知県の情報公開条例には、情報公開を通じた説明責任の履行と公正で民主的な県政の推進を目的とし、行政文書の開示請求権の尊重を運用の基本とすることが定められています(下記参照)。

 それに照らして、今回の開示決定は情報公開制度の趣旨から大きく逸脱するもので、行政の都合で開示文書およびその内容を取捨選択した不当な決定であると考えられます。

 請求内容に該当する文書をきちんと開示していただければ、お互いに余計な労力を使わなくて済むと思うのですが…。強引に事業を進めようとすればするほど、余計な労力を使わないといけなくなることを十分認識していただき、住民と向き合って十分な説明を行い、意見を聞き、対話する姿勢へと転じていただければと思います。

 

注1)行政文書(情報公開の対象)の定義は「愛知県情報公開条例解釈運用基準」の中で定義されています。ご参考までに、行政文書の定義に関する規定を抜粋したPDFをアップしておきます。

 愛知県情報公開条例解釈運用基準(行政文書の定義に関する規定の抜粋)

注2)調べたい事柄に関して、実際にどのような文書が存在するかを確認したい場合は、各課で作成・保管している行政文書の「目録」も活用できるかもしれません。

【参考】愛知県情報公開条例(抜粋)

(目的)
第1条 この条例は、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、実施機関の管理する情報の一層の公開を図り、もって県の有するその諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な県政の推進に資することを目的とする。

(解釈及び運用の基本)
第3条 実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、行政文書の開示を請求する権利を十分に尊重するものとする。この場合において、実施機関は、個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない。